人工知能・AI・ディープラーニングの現状と5つの弱点 | AIシリーズ②

現在のディープラーニングを用いた人工知能・AIの「現状」と「5つの弱点」について紹介します。

近年「ディープラーニング」や「AI」という文字を新聞で見ない日はないのでは?というくらいに盛り上がっています。

ですが正直、「現時点でいったい何ができて、今後さらにどんなことができそうなのか?」

この点をきちんと理解している人は少ないのではと思います。

さらに、「このまま行けば人間の仕事はほとんど奪われる」とか、「人工知能の反乱が起こる」なんて話もあります。

きちんと、現在の人工知能・AIにはどのような弱点があるのかを把握して、未来を考えることが重要です。

本記事では、人工知能・AIの「現状」および「5つの弱点」を私なりの視点で整理します。

現在の人工知能・AIの状況と今後の展開

前回記事では、全探索という第1AIから、チェス、将棋、囲碁で勝てる、最新の第4AIまで進歩していったAIの歴史を紹介しました。

【図解:3分で解説】 人工知能・AIの歴史|機械学習、ディープラーニングとは|AIシリーズ①
本記事では図解で分かりやすく「人工知能・AIの進歩の歴史」を紹介します。"人工知能"や"AI...

それでは現在は「次の第5AIを目指している段階にあるの?」と思いますが、そうではありません。

現在は「ディープラーニングを中心とした第4AIを現実社会で利用していく」という段階にあります。

これまでのAIは、囲碁や将棋のように「すべての状況がきちんと説明できる限定的な環境」でのAIでした。

ですが、現実世界は違います。

物は乱雑に並んでいたり、風が吹いていたり、為替は変動したり、囲碁や将棋よりも非常に複雑な環境です。

そのような環境でも活躍できる、現実世界で役立つAIを作ろうという試みが進んでいます。

まずはじめに、現在の最新のAIがどのようなことができるのかを知るために、プリファードネットワークとファナックという2社の協同実験の動画を紹介します。

動画内容は、複雑に置かれている材料をロボットアームできちんと運ぶという作業です。

材料の置かれ方を画像として認識し、ディープラーニングにより、とりやすい角度の物体とつかみ方を自動的に学ぶという試みです。

回数を重ねるに従い人工知能がだんだん学習して、運ぶ成功率が上がります。

1分ほどの短い動画なので、少しお付き合いください。

【バラ積みロボット: 深層学習で教示レス動作獲得】

このように最新のAIは、現実世界での応用へと進んでいます。

この動画のような円柱を運ぶだけの作業は、AIがなくても人がチューニングして行なうことができます。

しかしこの先には、現在のロボットではチューニングが難しい繊細な作業も、この動画のようにロボットが自分で学習して、自動でできるようになる可能性が大きいです。

すると、工場で働く人は減ることになります。

この他にも少し知的な作業である「事務系の仕事」も人工知能・AIが行なうようになるでしょう。

つまり、

「ちょっと知的な作業の大半が、AI・ロボットに奪われる」ということです

一方でこのようなディープラーニングを中心とした第4AIの「5つの弱点」を次に説明します。

現在の人工知能・AI、ディープラーニングの5つの弱点

現在のディープラーニングは画像に特化しすぎていて、汎用性が少し低いという問題があります。

とくに動画を扱う技術は確立されていません。

ですが、画像以外への応用は目下研究が進んでいるところであり、そのうち解決されると思われます。

ここでは、そうではない「根本的な問題」から5つの弱点を考えます。

①大量の学習データが必要なため、珍しい課題の判断が困難

②イノベーションが起こせない

③カリスマ性がない

④人の心を動かせない(ホスピタリティとエナジャイズ)

⑤人間の身体性を再現できるロボットの器が必要

を紹介します。

弱点①大量の学習データが必要なため、珍しい課題の判断が困難

ディープラーニングというプログラムの中には非常にたくさんのパラメータがあり、それらを大量の学習データを用いて自動的に調整しています。

そのため、パラメータの数に応じて非常にたくさんの学習データが必要となります。

その結果、学習データが大量に準備できない課題には対応できません

例えば、珍しい病気かどうかの判断をするさいに、珍しい病気のデータは大量に用意できないという問題が考えられます。

また企業で非常に重要な案件であるM&Aをどうするかについても、そうそうたくさんの案件があるわけでないので、その判断をAIが行なうのは難しいと考えられます。

株や為替の予想でも分足のデータはたくさんあるので、15分後の価格はある程度予想できるかもしれません。

ですが、年足はたくさん用意できないので、長期予想は困難だと考えられます。

このように「データ数の少ない珍しい知的判断課題」に、現在のAIは対応しきれないと考えられます。

弱点②イノベーションが起こせない

現在のAIはイノベーションを起こすことができません。

概念的に表すと、AIは足し算はできても、掛け算はできないです。

2と3の資源があればそこから5の資源を作り出すことはできても、2×3をして6以上を生み出すこと(=イノベーション)ができません。

分かりにくいので例で説明します。

「アインシュタイン以前の全論文のデータと全実験の結果を入力すれば、自動的に相対性理論をAIが創出できるか」いうと、そうではありません。

(私はこの課題をアインシュタインプロジェクトと呼び、このレベルがシンギュラリティをおこす次段階のAI、第5AIだと考えています。その詳細はそのうち別記事でお話します)

人工知能・AIやディープラーニングにできることは、限られた環境下での最適化であって、イノベーションではありません。

少なくとも将棋AIは「将棋板を引っくり返す」ということを突然しません。

ですが、AIが新たにビジネスを創造するにはこんな型破りな行動も生み出すイノベーション能力が必要となります。

このようなイノベーション能力は現在のAIにはないと考えられます。

弱点③カリスマ性がない

AIにはカリスマ性、人を引き付ける魅力はありません。

例えば、尊敬している経営者やチームリーダーが、「このプロジェクトを皆でやろう!!」と意思決定するから、チームの達成へのやる気、モチベーションが上がり、成果につながります。

もし同じプロジェクトでもAIに、「成功確率が高いのでやりなさい」と言われて、部下は最大限の力を発揮できるでしょうか?

また、メッシやイチロー、そして人間国宝と呼ばれるような職人も唯一無二のカリスマ的存在です。

AIは同じものが大量に生産されるので、唯一無二のカリスマ性を必要とするタイプの職業を代行することは難しいかもしれません。

弱点④人の心を動かせない(ホスピタリティとエナジャイズ)

現段階のAIでは人の心を動かすのは難しいと私は感じています。

例えば「助産師さん」を考えてみましょう。

私は男だから分からないのですが、助産師さんが励ましてくれるから出産という大変なことができるのだと思います。

AIやペッパーくんが「リキンデクダサイ」って言って、女性は子供を生む激痛に耐えれるのでしょうか・・・

その他、カウンセラーや精神科医など、人だからこそ、「わたしたちの悩み・気持ち」を理解し解決してくれるという職業は、AIが取って代わるのは難しいかもしれません。

弱点⑤人間の身体性を再現できるロボットの器が必要

もし、ロボットに人の代わりをさせるのであれば、人並の知性を持つAIと同時に、人と同じ動きを可能とするロボットが必要となります。

サッカーを例にすれば、メッシの試合中のすべての動きデータを取得できて、メッシの動きをコンピュータ上で完全に再現できて、メッシAIが生まれたとしても、その動作指令を完全に再現できるロボットが必要であるという課題があります。

(加えて、そもそもメッシの動きを全て取得するセンシングの困難さもありますが・・・)

以上、5つの弱点

①大量の学習データが必要なため、珍しい課題の判断が困難

②イノベーションが起こせない

③カリスマ性がない

④人の心を動かせない(ホスピタリティとエナジャイズ)

⑤人間の身体性を再現できるロボットの器が必要

を紹介しました。

今後のAIと人間

以上、私が考える5つの弱点を紹介しました。

ですが、だからといって、AIやディープラーニングが役に立たない訳ではありません。

例えば、2011年にアメリカのクイズ大会で、クイズ王に対してIBMのワトソンというAIが勝利しました。

このAIはただ問題文と回答文の関連性を全探索しベイズ推定により、もっともらしい答えを求めるものであって、実際に人間以上の知能を持っているわけではありません。

しかし、それでも人間が情報探索する以上の能力を現在のAIが備えていることを示しています。

応用先として、毎日膨大な研究論文が発表されるなかで、特定の病気に関わる論文と治療成分の最新情報を検索するなど、これまで人が行なっていたことの大部分をAIが担える可能性を示しています。

その他に日本国内では人工知能が東大入試に合格できるかという「東ロボ君プロジェクト」というものがありました。

最終的には2016年11月に東京大学合格を断念した事を発表しました。

ですが、最終段階では2015年6月に進研模試「総合学力マーク模試」を受験し、5教科8科目で511点(全国平均416.4点)、偏差値57.8という成績を収めました。

偏差値57.8ということは、その世代の約8割の人間よりはテストの点数が高いということです。

働くうえでは当然、偏差値がすべてではありません。

ですが、だいぶ乱暴な論理展開で考えると、

各世代の上位2割の人間しか「AIにできない知的仕事」にはつけないということになります。

偏差値60以下の残りの8割の人間は、「知的さを必要とされない仕事」や「AIに指示されるだけの仕事」につくかもしれません。

これはだいぶ乱暴な論理展開ですし、この先の未来がどうなるかは分かりませんが、そんな時代が来る可能性もあるのです。

まとめ

いかがでしたか。

今回は、「人工知能・AIの現状と5つの弱点」についてご紹介しました。

とくにこの5つの弱点は私独自の解釈なので、研究者によっては様々な意見があると思います。ひとつの参考程度としてください。

次のページでは、各世代の約8割の人間よりも賢いAIが存在する時代で、わたしたちはどのように働けば良いのかを紹介します。

以上、ご一読いただきありがとうございました。

⇒次のページへ

これからの人工知能・AI時代の働き方と必要な能力 | AIシリーズ③
この先人工知能が発達した未来で、「人はどのように働けばよいのか」について紹介します。第1回で...

⇒TOPページへ

「STEM教育×脳科学×AI」から未来を考えるブログ