論理的思考力・ロジカルシンキングについて、具体的な内容、鍛え方、おすすめ本を紹介します。
入門レベルから、あまり本などで説明されていない内容まで紹介します。
私は「ロジカルシンキング」と「論理的思考力」を同じものとして扱っていますので、これ以降、ロジカルシンキングで統一します。
前記事ではロジカルシンキングの土台となる推論力について説明しました。
本記事ではロジカルシンキングを取り扱います。
ロジカルシンキングとは、立場や前提条件、優先順位、知識、価値観の異なる相手に対して自分の主張を伝えるための「道具」であり、答えのないビジネスや研究の世界での「会話ルール」です。
この会話のルールにのっとらないと、相手を説得し、自分の主張を受け入れてもらえません。
そして、自分の主張がロジカルでなく相手に受け入れてもらえない原因は次の2つです。
①網羅性の不足による、「他には考えるべきことはないの?」、「そのアイデアは悪くないけどベストなの?」という疑問
②論理の飛躍による、「本当にそれで結果が出るの?」、「話のつながりが分からない」といった疑問
そのためロジカルシンキングとは
「もれなく、だぶりなく、主張間に飛躍のない考え方」と定義されます。
ロジカルシンキングのルールに則れば、相手が納得しやすいだけでなく、
・自分の気付いていない方法が思いつく
・うまく結果が出なくても、何が悪かったのか改善しやすい
という利点もあります。
本記事ではまず「もれなく、だぶりない考え方」の道具、MECE(ミーシー)を紹介します。
さらに、MECEに考えるコツを紹介します。
そして、MECEを独立に2つ組み合わせたマトリクス、MECEを縦に組み合わせたロジックツリーを紹介します。
その後、「主張間に飛躍のない考え方」のための道具、三角ロジックについて紹介します。
MECEの方法とコツ
MECEとは
MECEとはMutually Exclusive and Collectively Exhaustive の略称で「重複なく・漏れなく」という意味です。
私は「もれなく、だぶりない考え方」と呼んでいます。
例えば、季節を春・夏・秋・冬と分けたり、利益を売上と原価に分ける考え方はMECEです。
一方、女性を20代、30代、40代以上と分けると、10代以下が抜けているので、もれがあります。
また、売り上げを製品A、製品B、関西の売り上げ、という分けかたをすると、だぶりがあります。
例題で考えるとMECEなんて、簡単な感じがするのですが、実際ビジネスシーンで使用するとなると想像以上に難しかったりします。
MECEのコツ
そこで、MECEのコツを紹介します。
MECEのコツは「分けたいものを四角形で書いて、線を引いて分ける」イメージをもつことです。
例えば季節であれば、以下の絵のようになります。
この線の引き方を「軸を作る」といった言い方をします。
この軸の作り方がMECEの”きも”であり、センスが問われるところです。
ですが、あまりこのコツをきちんと書かれている本はないです。
どう軸を作ればよいのか、4つの方法を紹介します。
分け方のコツ
①対立分解(Aとnot A)
分けたいものをAとnot Aに分ける方法です。
なんか当たり前のようですが、実は強力な手段です。
なぜなら絶対にMECEから外れないからです。
例えばお客さんをMECEに分けるときに、男性とnot男性(女性)に分けると絶対にMECEです(LGBTの話は置いておくとすると)。
さらに女性を59歳以下とnot59歳以下(60歳以上)に分けると、これも絶対にMECEです。
「世の中で大切なもの」をMECEに考えるのは難しいですが、「お金で買えるもの」と「買えないもの」といった分け方をしていくと考えやすいです。
取り扱いにくい対象をMECEに分けるときに、2項対立は非常に便利で、意外に使えるので知っておくと良いです。
②掛け算分解
2つ目の分け方は対象を掛け算で分割することです。
例えば、売り上げを客単価×客数などに分割します。
これは式分解やLISS(linear independence and spanning sets)と呼ばれたりもします。
この掛け算分解の問題はフェルミ推定と呼ばれたりします。
フェルミ推定の例題としては、
「日本のTVの売り上げ台数は年間何台でしょう?」
とか、
「たったいま、日本中のトイレで大をきばっている人は何人でしょう?」
などがあります。
掛け算分解は、定量的であり、信頼性が高いのが特徴です。
また実際のデータと照らし合わせて検証しやすいという利点もあります。
③プロセス(時系列)分解
これは時系列で分解する方法です。
例えば人間であれば、
赤ちゃん、幼児、幼稚園児、学生、社会人、シニア、と時系列で分解できます。
家事で食事を作る作業であれば、食材買出し、下ごしらえ、調理、飲食、皿洗いとプロセス分解されます。
ビジネスはプロセスの流れなので、プロセス分解はビジネスシーンで使われることが非常に多い手法です。
④要素分解
要素分解はそれを構成している要素に分解する方法です。
最も一般的な分け方になります。
例えば動物を、哺乳類、魚類、爬虫類、・・・と分けたり、サッカー選手をゴールキーバー、ディフェンダー、ミッドフィルダー、フォワードと分けます。
以上、MECEに分けるコツをまとめますと、
・「分けたいものを四角で書いて、線を引いて分ける」イメージを持つこと
・4種類の軸の作り方:対立分解、掛け算分解、プロセス分解、要素分解
これらを、問題に応じてうまく使い分けます。
またビジネスシーンにおいては、どの企業でも当てはまる問題が多いので、MECEになるような有名な分け方が何種類かあります。
これらをビジネスフレームワークと呼びます。
例えば3Cとか4Pとかです。
これらのビジネスフレームワークについては次の記事で紹介します。
MECEの組み合わせ
MECEを縦軸と横軸に使用して分類すると、マトリクスというものを作ることができます。
例えばレストランに来るお客さんをマトリクスで分けると、ランチとディナー、新規客とリピート客で4要素に分解することができます。
このような図をマトリクスと呼びます。
そしてマトリクスで問題のある要素を示してあげます。
マトリクスは一目で伝えたいことを伝えやすく、相手に説得力を与えやすいという利点があります。
その他に、MECEをさらにMECEに分解したものを、ロジックツリーと呼びます。
例えば、利益を分解するのに、売上と原価に分けます。
そしてそれぞれをさらに、客数×客単価、流動費+固定費と分解するなどして、ツリーを作ります。
ロジックツリーは、上にいくほど抽象的で、下に行くほど具体的になります。
ロジックツリーはロジカルシンキングやロジカルライティングの重要概念です。
以上、もれなく、だぶりなく分割し、網羅性をきちんと確保するためのMECEについて紹介しました。
MECEに従って考えていれば、あれこの要素の部分が考えられていないぞと気付き、「自分の気付いていない方法が思いつく」という利点があります。
またロジックツリーをきちんと組み立てていれば、うまく結果が出なくても、ツリーをたどってどこが悪かったのか改善しやすいです。
そのためロジカルシンキングは相手に説得力を与えるだけでなく、自分の思考の幅も広げてくれます。
次に、論理の飛躍なく、相手に伝えるための方法を紹介します。
三角ロジックで論理の飛躍を防ぐ
ここでは、「本当に結果が出るの?」、「話のつながりが分からない」といった論理の飛躍を防ぐための方法である、三角ロジックを紹介します。
三角ロジックとは主張を伝えるときに、「主張」、「データ」、「根拠」の3つの部分で考える方法です。
例えば、「明日は傘を持っていった方が良い」という主張をするときに、データとして「天気予報で明日は雨と言っている」と見せれば、普通の人は納得して、論理の飛躍はないように見えます。
一方で、データとして「つばめが低く飛んでいた」と見せれば、多くの人は「?」と思います。
つまり、
スライド1:つばめが低く飛んでいた(データ)
スライド2:よって明日は傘を持っていった方がよい(主張)
だと、論理に飛躍があるように感じてしまいます。
(論理に飛躍があるかどうかは、聞き手の前提知識などに左右されるので、一般論です。)
この場合、三角ロジックに基づき「根拠」の部分が必要です。
ここでの根拠は、「翌日が雨だと湿度が高く、昆虫の羽が重くなって下の方を飛ぶため、つばめも低く飛ぶ」という話をはさんであげる必要があります。
つまり、
スライド1:つばめが低く飛んでいた(データ)
スライド2:翌日が雨だと湿度が高く、昆虫の羽が重くなって下の方を飛ぶため、つばめも低く飛ぶ(根拠)
スライド3:よって明日は傘を持っていった方がよい(主張)
となります。
こうすれば、論理の飛躍がなく、相手に納得してもらうことができます。
データと主張の間を根拠でつなぐのが三角ロジックです。
さらに、ここでの「根拠」は一段下の「主張」でもあります。
聞き手は、
「翌日が雨だと湿度が高く、昆虫の羽が重くなって下の方を飛ぶため、つばめも低く飛ぶ」
って本当なの?
と思うかもしれません。
すると、それに応じてまたデータや根拠を提示します。
このように、三角ロジックは縦にどんどんつながります。
この三角ロジックのつながりがきちんとしていれば、論理の飛躍を感じず、相手は納得できます。
ただし、論理の飛躍度合いは聞き手に依存します。
おばあちゃん相手であればツバメの話に根拠はいらないです。
一方、若い人には根拠を示さなければ、論理の飛躍に感じます。
聞き手の前提条件、知識に合わせた考え方が必要です。
以上、論理の飛躍を防ぐ三角ロジック「主張」、「根拠」、「データ」を紹介しました。
この三角ロジックはトゥールミンロジックと呼ばれる考え方の簡易版です。
トゥールミンロジックはややこしいので、三角ロジックが使えれば十分です。
最後にロジカルシンキングを鍛える本を紹介します。
ロジカルシンキングを鍛えるおすすめの本紹介
最後にロジカルシンキングを鍛えるおすすめの本を紹介します。
まずはじめに、「はじめてのロジカル問題解決」をお勧めします。
タイトルに「問題解決」とありますが、そのベースとなるロジカルシンキング、とくにMECEとロジックツリーの説明、例題が充実しています。
とても分かりやすい口調で書かれていて、入門書におすすめです。
次に、「過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題」がおすすめです。
フェルミ推定からロジックツリー作成による問題分析までを学べる本です。
実際に コンサルの入社試験で出た問題を解説しています。
回答例もしっかりと充実しており、 ロジカルシンキングを学べる良書です。
ロジカルシンキングの仕上げには、「30の「勝負場面」で使いこなす ロジカル・シンキングの道具箱」を読むのがお勧めです。
ロジカルシンキングに触れたことがある中級者向けの本です。
実際に著者が企業研修で行っている問題と解説が掲載されています。
Step1はピラミッドストラクチャーの横方向、MECEの練習です。
Step2は縦方向の論理のつながり、Step3以降は総合演習です。
問題例が豊富で、自分で考え、解答をチェックするので、練習を通してロジカルシンキングを高められます。
以上の3冊を読んで、問題をこなせばロジカルシンキングがだいぶ身につくと思います。
これらの本を読んだあと、さらにロジカルシンキングの能力を高めるには、「上司などからのフィードバック」が重要です。
自分が可能な限りロジカルに考えたものに対して、上級者の方にフィードバックをもらうことで自分の限界点を知り、さらにブラッシュアップすることができます。
以上、ロジカルシンキングの内容とコツ、おすすめ本の紹介でした。
次のページでは、ビジネスシーンでMECEに考えるための道具である、ビジネスフレームワークを紹介します。
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