論理的思考はアナログ的で思いやりが大切:ロジカルシンキングと「弓と禅」|問題解決能力⑦

ロジカルシンキングは突き詰めていくと、最終的にその人の人間性、思いやり、禅の心にたどり着くというお話をします。

「突然何を言い出すのだ」という感じですが、ぜひお付き合いください。

ロジカルシンキングというと、とても冷徹で機械的で理系なイメージを持たれる方が多いと思います。

そのイメージは確かに間違っておらず、ある程度の推論力と経験を持った人が同じ問題に取り組めば、8割方は同じようなアウトプット(解決策)が生まれます。

ですが、最後の2割には、その人の人間性が反映されます。

論理的思考・ロジカルシンキングは想像以上に人間味のあるアナログ的思考であることを、例を挙げながら説明します。

主張を届けるためのデータの選び方

過去の記事で、論理的思考力のベースとして三角ロジックを紹介しました。

ロジカルシンキング(論理的思考力)を鍛える方法、おすすめ本を紹介

三角ロジックとは、「主張」を相手に伝えるのに、「データ」と「根拠」を示す方法でした。

実は、同じ「主張」を伝えたい場合でも、顧客や相手によって「データ」を使い分けることが重要です。

例えば、主張が「あなたはダイエットをした方が良い」だとします。

それに対して、様々なデータの用意のしかたがあります。

例えば、

データ1:BMIが○以上の人の平均寿命(寿命関係)

データ2:恋人は痩せている人と太っている人どちらが良いかアンケート(恋愛関係)

データ3:太っている人間は出世できないのか調査(仕事関係)

データ4:体重別の食費・医療費(金銭関係)

データ5:痩せてできるようになった新たな趣味特集(趣味関係)

などです。

もし相手が、健康面を気にかける人であれば

「あなたの体重では、平均寿命は◎◎くらいよ。あなた、孫が成人するのを見たいって言ってたけど、いまのままじゃ病気になるんじゃない?」

と説得するのが良いかもしれません。

一方で、最近片思い中の人であれば

「世間的にはこれくらいの体重の人がもてるみたいよ。もう少し痩せたら、この恋愛うまくいくんじゃない?」

と説得するのが良いかもしれません。

(例なので、極端ですが)

つまり、同じ主張を伝えるにしても、相手の欲求に合わせてデータを変えるのが重要です。

そのためには、マズローや選択理論など、人間の欲求について学ぶのが有効です。

例えば以下の図は、選択理論の欲求説です。

欲求説とか難しい言葉が出てきましたが、結局は相手によって何が響くのかを考え、相手に合わせて思いやりを持った思考が大切です。

根拠とアフリカの靴問題

次に三角ロジックで、同じ「データ」でも「根拠」が変われば、「主張」も変わるという話をします。

「アフリカで靴を売る」という有名な話があります。

靴メーカーがアフリカのとある地域に、「靴の販売先としてどれくらい魅力的なのか調査せよ」と若手社員2人を送り込みました。

若手社員AとBは現地で、まったく誰も靴をはかず、裸足で生活している状況を確認しました。

それを受けて、若手社員Aは

「対象地域では誰も靴を履いていません」(データ)

「この地域には靴を履く文化がないです」(根拠)

「この地域は靴の販売先として魅力はありません」(主張)

と報告しました。

一方で、若手社員Bは

「対象地域では誰も靴を履いていません」(データ)

「そのため、靴の魅力を伝えらればたくさんの需要が生まれます」(根拠)

「この地域は靴の販売先として非常に魅力的です」(主張)

と報告しました。

同じデータ「対象地域では誰も靴を履いていません」から始まりましたが、「根拠」を変えることで、主張がまったく正反対になります。

論理的思考、ロジカルシンキングの作法を守っていても、このようにいくらでも正反対のことを主張することができます。

靴の販売例のように、実は論理的思考、ロジカルシンキングとは一意に決まる行為ではなく、非常にアナログ的な行為です。

話がこじれたりかみ合わないときはツリーの一段上へ

話がかみ合わない場合の対処法を紹介します。

ロジカルライティングやロジカルシンキングで、ロジックツリーやピラミッドストラクチャーを紹介しました。

ロジックツリーもピラミッドストラクチャーも、基本的には、上にいくほど抽象度が高く、逆に下にいくほど具体性が高いです。

議論をしていて話がかみ合わない場合には、ふたりの考えをロジックツリーの構造で整理し、どの段数までは同じで、どこの部分が異なっているのか整理するのが効果的です。

ツリーの上段へと視点を移し、抽象度を上げて話を整理するのが重要です。

また、話がずれますが、

「すぐに役立つものはすぐに役立たなくなる」

「簡単に身につくスキルは、すぐに役立たなくなる」

という話があります。

これはロジックツリーの下の方、より具体的なものを学べば、具体的である分、すぐに役立ちますが、応用性にとぼしく、適用範囲が狭いです。

その結果、すぐに役に立たなくなります。

一方で、ツリーの上の方は、抽象度が高いため、各事例に適用するのは簡単ではありません。

ですが、抽象度が高い分、適用範囲が広いです。

そのため、いろいろなところで役立ちます。

ハウツー本などはツリーの下の方に分類され、具体的ですぐに役立ちます。

一方ですぐに役に立たなくなります。

教養本などはツリーの上の方に分類され、抽象的ですぐには役立ちません。

ですが一生自分に役立ちます。

どちらかに偏るのではなく、ツリーの上と下の両方を満遍なく学ぶ姿勢が大切です。

ロジカルシンキングは顧客志向の人間性がカギ

ここまでロジカルシンキングは実はアナログ的であることを紹介しました。

結局「主張」を届けるためには、相手や顧客への思いやりが大切です。

欲求説を紹介しましたが、そうした知識やテクニックではなく、顧客に貢献したいという思いで仕事をしているかどうかが重要です。

小手先のテクニックではなく、その人のあり方から生まれる姿勢が、思考に反映され、ロジカルシンキングとなり顧客に響く成果物へとつながります。

この考え方は論語解説で紹介している考え方です。

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成果を出そうとしてスキル・知識を駆使し、ロジカルシンキングという「やり方」にこだわるのでなく、成果を出すにふさわしい人間性をもって、心の「あり方」を大切にし、そこから自然と生まれる考え方「やり方」によって成果が生まれる人間を目指すのが大切です。

最後にこの「やり方」と「あり方」に関する本を紹介します。

アップルの故スティーブ・ジョブズ氏は、論理的思考力も高かったですが、禅の思想もさかんにとりいれ、心のあり方、禅の思想を大切にし、スピーチなどでもさかんに引用していたことは有名です。

そんなジョブズの愛読書が「弓と禅」という本です。

この本は、大正時代、ドイツ人の著者オイゲン・ヘイゲル氏が日本の弓道を通じて、和と禅の心を学ぶ体験記です。

西洋のゴリゴリ・ロジカルシンキングのヘイゲル氏が、弓道をテクニック(やり方・コツ)で学ぼうとします。

指を放つタイミングや持ち方の工夫など、やり方で改善しようとします。

それに対して、師匠が、テクニックでなく心のあり方を説きます。

心のあり方が正しければ、自然と指を放つタイミングなどは正しいテクニックへと落ち着くのであり、禅の心を身につける大切さを伝えていきます。

そんな「ロジカル的やり方」と「禅的あり方」にヘイゲル氏が苦悩しながら、和の心を学ぶ内容となっています。

ヘイゲル氏はこれらの学びをドイツ語で出版しました。

この本は日本で翻訳され、「日本の弓術(岩波文庫)」と「弓と禅(福村出版)」の2冊があります。

おすすめは、まず「日本の弓術」を読んで、それから「弓と禅」を読むことです。

ヘイゲル氏は原書の初版と、大幅に改定した第二版を出版しました。

「日本の弓術」は初版を訳したものです。

また巻末には、ヘイゲル氏の通訳をしていた先生の解説も記載されており分かりやすいです。

一方で「弓と禅」は改定された第二版を訳したものです。

第二版は、改定時により禅的思考の部分が多く追加されており、禅の思想に慣れていないと難しいところがあります。

まずは初版翻訳の「日本の弓術」を読み、その後改定版翻訳の「弓と禅」を読むのがおすすめです。

以上、論理的思考力、ロジカルシンキングがアナログ的である点を紹介しました。

みなさまの参考になれば幸いです。

ご一読いただきありがとうございました。

以上でロジカルシンキングシリーズ7記事は終了となります。

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