「論語」の各章の意味を、AI時代の文脈で読むとどう意味しているのか、子供にも分かるように紹介します。
本日は、学而篇の第2章、「君子務本」です。
学而篇 第2章
君子は本(もと)を務(つと)む。本立って道(みち)生ず。
孝弟(こうてい)なるものは、それ仁(じん)をなすの本か。
(意味)
立派な人間は、「人間としてのあり方(根本)」を身につけようと努力します。
人間としてのあり方が身につけば、自然と「幸せで実りある人生」が生まれます。
あり方とは「思いやり・愛」であり、その土台のひとつは、親と兄弟姉妹を大切にすることです。
(説明)
君子とは、孔子が目指す人間像であり、国を治めるに相応しい人間のことを指します。
ですが、現代の文脈では、「立派な人間」と訳しました。
本とは、根本という意味です。人としての価値観や人間性という意味ですが、私は「人間としてのあり方」と訳しました。
道とは、そのまま道であり、人生という意味ですが、ここでは「幸せで実りある人生」としました。
仁とは、思いやり、愛のことです。
論語では仁という言葉を最も重要なものとして扱います。
君子とは仁が体現できている人のことです。
この漢字は人が2つの敷物の上に座って、他人とお話している姿から成り立った漢字です。
他人と話している姿が優しく、思いやりのある様子であり、愛という意味へと使われるようになりました。
秋篠宮家長男の悠仁(ひさひと)さまにも、この漢字が使われています。
そして仁(思いやり・愛)を身につけるのには、まずは孝弟が大切だと説いています。
孝は親孝行の孝ですね。
弟はおとうとですが、広く兄弟、姉妹を指します。
また孝弟は家族に始まり、年長者、仲間を大切にするという意味もあります。
論語の学而篇第2章は、
◎「人間としてのあり方」を身につける大切さ
◎人間としてのあり方とは愛と思いやりであること
◎愛と思いやりのある人間になるには、まずは家族と自分の友達、仲間を大切にすること
の大切さを伝えている章になります。
AI時代の読み方
この章をAI時代の現代の文脈で考察します。
この章の「人間としてのあり方」を身につける大切さは、AI時代の現代、論語の書かれた2500年前よりも重要性を増しています。
なぜなら現代科学が進めば進むほど、学ぶべきスキル内容が増えるからです。
スキル内容の量が増えれば増えるほど、人間としてのあり方を学ぶ時間は減ります。
明治時代の子供に比べ、今の子供は150年分の科学の進展を、余分に学習する必要があります。
例えば、プログラミング教育や英語教育などの導入が決まり、小中学校ではますますスキル重視の教育になっています。
そして社会人になってからも、ビジネスパーソンとしての心のあり方よりも、仕事スキルを身につけるのに手一杯になっています。
ですが、スキルや道具に振り回されるのでなく、「人間としてのあり方」を身につけることが重要です。
包丁は料理人が持てば食材を切り料理を作る道具ですが、強盗が持てば人を傷つける凶器になります。
「人間としてのあり方」から出発すれば、自然と身につけるべきスキルが身につき、実りある人生になるのです。
植物が、まず根を張り、その上で茎を伸ばして花を咲かせるのと同じですね。
また、19世紀のスイスの哲学者アンリ・フレデリック・アミエルは「アミエルの日記」という本で次のような言葉を残しています。
「心が変われば行動が変わる/行動が変われば習慣が変わる/習慣が変われば人格が変わる/人格が変われば運命が変わる/運命が変われば人生が変わる」
「あり方、心」から出発することの大切さは、東洋文明だけでなく西洋文明でも同じです。
一方で、「あり方」から出発せずに、「スキルや道具、テクニック、やり方」から出発するとどこかで止まってしまう、もしくはうまくいかない、誤ってしまう、そんな時がきます。
では子供たちにどうやって、「人間としてのあり方」を教えればよいのか?
ひとつはこの章であるように、親がまず「家族と仲間を大切にしている姿」を子供たちに見せることです。
そして二つ目は親が「人間としてのあり方」を、書物や人物から学び、子供に体現することです。
書物は、日本であれば、「論語(儒教)+経典(仏教)+古事記(神道)」であり、キリスト教世界では旧約聖書+新約聖書であり、ユダヤ教では旧約聖書であり、イスラム世界ではコーランです。
これらの書物は長年の歴史を耐え、現代まで生き抜いた、「人間としてのあり方が最も妥当に描かれている書物」と考えることができます。
これら書物からどれかを選びそこから学んでいく。
そしてもちろん書物だけでなく、人として尊敬できる方を見つけ、その人の生き様から学んでいくことも重要です。
日本人が一番とっつきやすい、宗教性のない「論語」を選び、本サイトではAI時代の読み方を今後も解説していく予定です。
まとめ
君子は本(もと)を務(つと)む。本立って道(みち)生ず。
孝弟(こうてい)なるものは、それ仁(じん)をなすの本か。
(意味)
立派な人間は、「人間としてのあり方(根本)」を身につけようと努力します。
人間としてのあり方が身につけば、自然と「幸せで実りある人生」が生まれます。
あり方とは「思いやり・愛」であり、その土台のひとつは、親と兄弟姉妹を大切にすることです。
論語の学而篇第2章は
◎「人間としてのあり方」を身につける大切さ
◎人間としてのあり方とは愛と思いやりであること
◎愛と思いやりのある人間になるには、まずは家族と自分の友達、仲間を大切にすること
の大切さを伝えている章になります。
スキル偏重でやり方重視な時代だからこそ、根底となる「人間としてのあり方」を身につける大切さを忘れないよう伝えてくれます。
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