「論語」の各章の意味を、AI時代の文脈で読むとどう意味しているのか、子供にも分かるように紹介します。
本日は、論語の一番最初に出てくる章を紹介します。
学而篇の第1章、「学習・有朋」です。
学而篇 第1章
学びて時にこれを習う。また説(よろこ)ばしからずや。
朋(とも)遠方より来る有り。また楽しからずや。
(意味)
学んで、常に復習するのは、よろこばしいことだ。
朋(とも)が遠くから訪ねてきて、知り合える。とても楽しいことだ。
(説明)
論語の一番冒頭の句です。
この1句目は「学習」という言葉、そして皇族が通う「学習院大学」の語源です。
また2句目の「朋有り」は、長州に生まれ、松下村塾で学び、明治維新後、陸軍の大御所となり総理大臣も務めた「山県有朋」の名前の由来になった句です。
習うとは、羽と白から成る漢字です。
これは「まだ白いヒナが懸命に羽を動かして飛ぶ練習をする」
という意味からできた漢字で、「必死に身につけようと努力する」という意味です。
時にとは、時々ではなく、「常に」という意味です。
説(よろこ)ばしからずやとは、「悦ぶ」という意味です。
「喜ぶ」と漢字が違うのは、「喜ぶ」は表面に感情をむき出してよろこぶという意味ですが、「悦ぶ」は心の中で非常に満足し、充実感を得てよろこぶという意味です。
朋(とも)とは、友人ですが、「友」と違うのは、「朋」は知り合いレベルではなく、同朋という言葉のように、「志を同じくする仲間」という意味があります。
この論語の一番最初に出てくる最も重要な句を読んで、どんな感想を持ちましたか?
私は中学生か高校生くらいのころ、この句を読んで、意味不明でした。
「いまどき小学生でも、学校で学んで、おうちで復習してる。
そのあと、友達と遊んでるし。
そんな小学生でもやっていることを何を偉そうに書いているんだ?」
これが正直な感想でした。
同じような思いを持った人もいるんじゃないでしょうか?
ですが、この句は実はそんな意味ではないんです。
次にきちんとした説明をします。
本当の意味
学びて時にこれを習う。また説(よろこ)ばしからずや。
朋(とも)遠方より来る有り。また楽しからずや。
重要なのは、学ぶの意味が現代と違う点です。
これは学校や塾でのお勉強という意味ではありません。
中国では古来から「易姓革命」といって、「最も徳の高い人格者を、天が、国を治める人間に任命する」という考え方があります。
この孔子の学ぶとは、「孔子が、国を治める人間になることを志して、それに相応しい人格者になれるよう、昔の偉い人たちの考え方や行動について書物から知識を得る」という意味です。
つまり、今風に言うと学ぶとは、「夢や志を持ち、その道のプロの考え方や行動を知る」という意味です。
学校でお勉強するという意味ではなく、「夢に向かって学ぶ」という点に注意して下さい。
そして、朋(とも)はただの学校のお友達ではないです。
学ぶと対応して、「同じ夢や志を持った人」という意味です。
つまりこの章の正しい意味は
学びて時にこれを習う。また説(よろこ)ばしからずや。
朋(とも)遠方より来る有り。また楽しからずや。
(意味)
夢と志を持って、その道のプロから学び、常にそれを自分のものにしようと努力することは、非常に心が満たされることです。
そして、自分と同じような夢・志を持つ人と知り合え、ともに夢を語り合い、切磋琢磨することはとても楽しいことです。
という意味になります。
子供にも分かりやすく説明します。
例えばプロサッカー選手になりたい子供がいるとしたら、
サッカー日本代表になりたいと夢を持ち、メッシのプレーを何度も見て学び、毎日そのプレーを真似して練習して、少しずつサッカーがうまくなるのはとても楽しいよ。
さらに、「俺も日本代表になりたいんだ」と同じ志を持った人と、クラブチームや選手権で出会って、互いの練習方法やサッカーの考え方を語り合うのは、非常に楽しいですよ。
という意味です。
この論語の学而篇第一章は、
◎夢を持つこと
◎夢に向かって常に学び続けること
◎同じ夢を持つ人と出会うこと
の大切さと楽しさを伝えている章になります。
AI時代の読み方
この章をAI時代の現代の文脈で考察します。
この章は、AI時代の現代でも色あせることはありません。
大ベストセラーのリンダ・グラットンの「ワークシフト」ではこれからの働き方として3つのシフトが大切だと伝えています。
ワークシフトには
①常に最先端技術を連続的に学び続けること
②3種類の人脈(自分と同じ夢や志を共有する仲間、自分と近いことに興味を持つ人とのネット上のつながり、心を癒してくれるパートナー・友人)を築くこと
③お金のためでなく、人生で大切にしたいことや夢のために働くこと
と書かれています。
これは孔子が2500年前に言っていた、
◎夢を持つこと
◎夢に向かって常に学び続けること
◎同じ夢を持つ人と出会うこと
という、論語の学而篇第一章と同じですよね。
つまり「これからのAI時代の働き方で大切ですよ~」とリンダ・グラットンが書いて大ベストセラーになったお話は、論語の一番最初に書いてあることなんです。
逆説的に考えると、論語という2500年以上読み続けられている「人間の生き方の本質、教養」と同じことを、現代の文脈で書いたからワークシフトは大ヒットした、とも考えられます。
ちなみに、科学的にもこのことは研究されています。
2014年の論文で、カナダのカールトン大学のヒル博士が、20~75歳の7,108人を14年間追跡調査し、「人生の目的を持つ人」ほど死亡率が低いことを明らかにしています。
[Hill, Patrick L., and Nicholas A. Turiano. “Purpose in life as a predictor of mortality across adulthood.” Psychological science 25.7 (2014): 1482-1486.]
人生に目的・夢を持つと、人生が充実するうえに長生きするようです。
まとめ
学びて時にこれを習う。また説(よろこ)ばしからずや。
朋(とも)遠方より来る有り。また楽しからずや。
(意味)
夢と志を持って、その道のプロから学び、常にそれを自分のものにしようと努力することは、非常に心が満たされることです。そして、自分と同じような夢・志を持つ人と知り合え、ともに夢を語り合い、切磋琢磨することはとても楽しいことです。
この論語の学而篇第一章は、
◎夢を持つこと
◎夢に向かって常に学び続けること
◎同じ夢を持つ人と出会うこと
の大切さと楽しさを伝えてくれます。
より良い人生を歩むために、そして子供たちによりよい教育を提供するためにも、ぜひとも伝えたい章です。
本記事のような形で論語について、AI時代の現代の文脈に置き換えて、孔子が伝えたかったことを解説していきます。
いつ完成するか分かりませんが応援していただければ幸いです。
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