「論語」の各章の意味を、AI時代の文脈で読むとどう意味しているのか、子供にも分かるように紹介します。
本日は、学而篇の第6章「弟子入則孝」です。
学而篇 第6章
弟子(ていし)入りてはすなわち孝、出でてはすなわち弟、謹(つつし)みて信、ひろく衆を愛して仁に親しみ、行いて余力あればすなわち以(もっ)て文を学べ。
(意味)
家庭では親孝行し、社会では上司・年長者の言うことに従い、約束を守って信用を得、民衆を愛して、仁の心を持つ人と親しくすることが大切です。
これらの実践ができてまだ余裕があれば、学問を学びなさい。
(説明)
弟子(ていし)は弟子(でし)ではなく、子供という意味です。
出でては、家庭を出てという意味で、社会に入ったらという意味です。
弟は、年長者に従うという意味です。ただし何でも言いなりになるという意味ではなく、素直に受け取るという点に注意してください。
謹(つつし)みては、慎重に物事を進め約束を守るという意味です。
文を学べは、古典(学問)を学べという意味です。
この章は、渋沢栄一も好きだった章です。
前半部分では学問を学ぶことよりもまず人間としてのあり方を実践する大切さを述べています。
そして、あり方の実践を心がけてなお余裕があれば、それから古典(学問)を学びなさいと述べています。
文を学べとは、直接的には古典を学べという意味になります。
この時代、国を治める人間を目指す人は、さらに過去の中国の古典(詩)から、過去の優れたリーダーがどのように国を治めていたのか、やり方を学んでいました。
ですが、「そんなやり方を学ぶ前に、まず人間としてのあり方を実践することを心がけなさい」と孔子は述べています。
現代の意味では、文を学ぶとは、スキル、テクニック、やり方を学ぶに相当します。
論語の学而篇第6章は
◎やり方ばかりに偏らず、人としてのあり方を実践することの大切さ
を伝えている章になります。
AI時代の読み方
この章をAI時代の現代の文脈で考察します。
この章では「リーダーとなる人間は、リーダーシップ論の知識やらリーダー的ふるまい方のテクニック(やり方)を本や研修で学ぼうとする前に、家庭なり職場なり社会なりで人としてのあり方を実践しようと心がけなさい」と伝えています。
AI時代が加速し仕事の多くがAIに代行されるようになれば、重要になるのは「人と人とのコミュニケーション部分」になります。
すなわち、リーダーシップやホスピタリティ・サービス、コンサルテイング営業などです。
人と人とのコミュニケーションにおいて、「リーダーシップ論」や「営業術」を学ぼうとすること自体は悪くありません。
ですが、「小手先のテクニックや知識を学んでそれを実践しても、それだけではうまくいきませんよ」と孔子は伝えています。
なぜならそのようなテクニックや知識(やり方)でうまくいっている人は、その土台となる人間性(あり方)が備わっているからです。
その土台(あり方)を無視して、やり方だけ学んで真似してもうまくいきません。
100m走に例えると分かりやすいです。
あり方とは「身体の筋肉のつき方など」で、やり方とは「走るフォーム」に対応します。
普通のおじさんが100m走世界チャンピオン(ボルトーなど)のフォームを完全に真似して同じように走ったところで、世界記録は更新できません。
多少は早く走れるかもしれませんが、タイムに限界がきます。
それは自身の「身体の筋肉のつき方など(あり方)」と、「走るフォーム(やり方)」がマッチしていないからです。
本当に早く走りたいなら、「身体の筋肉のつき方など(あり方)」と、「走るフォーム(やり方)」の両方が大切です。
ですが、どうしても人は「やり方」ばかりを改善しようと偏りがちです。
やり方のほうが、短期的に改善されそうな気がするし、とっつきやすくて簡単だからです。
ですが、あり方をおろそかにしてはいけないのです。
あり方(人間性)が土台となり、その土台に合わせたやり方(テクニック)を身につけることが大切だということを忘れないでください、と孔子は伝えています。
まとめ
弟子(ていし)入りてはすなわち孝、出でてはすなわち弟、謹(つつし)みて信、ひろく衆を愛して仁に親しみ、行いて余力あればすなわち以(もっ)て文を学べ。
(意味)
家庭では親孝行し、社会では上司・年長者の言うことに従い、約束を守って信用を得、民衆を愛して、仁の心を持つ人と親しくすることが大切です。
これらの実践ができてまだ余裕があれば、学問を学びなさい。
論語の学而篇第6章は、
◎やり方ばかりに偏らず、人としてのあり方を実践することの大切さ
を伝えている章になります。
リーダーシップやコミュニケーションがますます重要となるAI時代だからこそ、「人としてのあり方の実践を心がけて土台を築き、その土台の上にやり方を学んでテクニックを構築していく」という点を心がけることが大切です。
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